【HSP×福祉職】児童自立支援施設で出会った『気持ちが分からない』子どもの成長物語

はじめに
「気持ち、分かんない……」
児童自立支援施設で働いていた頃、担当していた中学1年生の男の子は、いつもそう答えていました。
HSP気質を持つ私は、この子が退所するまでに何ができるのか、毎日自問自答していました。
こんにちは、HSP社会福祉士のたくやです。大学卒業後すぐに児童自立支援施設で働き、様々な子どもたちと生活を共にしてきました。楽しいことも辛いこともありましたが、今回はその中でも特に心に残っている、ある男の子とのエピソードをお話しします。
児童自立支援施設での子どもとの出会い
勤務3年目の頃、私の担当となったのは中学1年生の男の子。
他人への加害行為が理由で施設に入所し、本来なら地元の中学に入学しているはずの年を、施設で迎えることになりました。
彼は明るく優しい性格で、問題行動もほとんどありませんでした。
ただ一つ、大きな課題がありました。それは、相手や自分の気持ちを理解することが苦手だったのです。
この課題こそが、入所理由となった出来事にもつながっていました。
私は彼が人の気持ちを理解できるようになるため、日々試行錯誤を重ねることになります。
気持ちを伝える練習と、迎えた退所の日
施設では子ども同士や職員とのトラブルが日常茶飯事です。
私は、彼がトラブルに関わったときは「その時、相手はどう思ったと思う?」「自分はどう感じた?」と問いかける時間を作っていました。
返ってくるのは、いつも「んー、分かんない……」。
それでも、一緒に気持ちを考え、想像する時間を大切にしました。
退所が近づくと、チェックシートを導入しました。
1日の出来事を振り返り、その時の相手や自分の気持ちを記入するものです。
心理士の方からも「いい取り組みですね」と褒めていただいたのを覚えています。
そして、あっという間に退所の日。
初めて会ったとき、「退所の日に気持ちを聞くからね」と伝えていた私は、彼にそのことを尋ねました。
すると、照れくさそうにこう言いました。
「嬉しい。あと少し寂しい。学校は少し不安……」
その一言が、私の胸を熱くしました。自分の言葉で感情を伝えてくれたのは、これが初めてだったのです。
HSP福祉職の私の心に残った理由
彼は本当に「気持ちが分からない」ことに困っていました。
以前の私なら「そんなわけないだろ」と思っていたかもしれませんが、実際に接してみて、それが事実だと分かりました。
検査は受けていませんでしたが、何らかの特性があったのかもしれません。
日々のやり取りの中で、私の助言なしに感情を言葉にできたことはほとんどありません。
だからこそ、退所の日のあの一言が、何よりも嬉しかったのです。
この経験は、本人の成長だけでなく、家族や学校、児童相談所など、周囲が一緒になって変わっていった証でもありました。
福祉の仕事の「やりがい」とは、まさにこういう瞬間なのだと感じました。
最後まで読んでくださった皆様へ
福祉の仕事は精神的に疲れることも多いですが、その分、大きなやりがいを感じられます。
HSPの方は特に、人の感情を深く感じ取れる分、この仕事で得られる喜びも大きいと思います。
私自身、HSPであることで辛いこともありますが、それ以上に良かったと思う瞬間があります。
良いことも悪いことも、人より深く感じ取れる――それは、とても素敵なことです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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